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 1987年、永田町の砂防会館内の中曽根事務所で元総理大臣、中曽根康弘氏を撮影した。年齢からしてすでに老人なのだが、背が高くがっちりしてカッコ良かった。永田町では唯一ダンディーという言葉が似合う男。僕は気合いが入った。歴史に残る偉大な政治家を撮影できる。アシスタントと警備の厳しい中曽根氏の部屋に向かう。途中SPから何度もチェックを受ける。持ち込み機材が不審というのもあるが、も〜ロック野郎!永田町の、しかも砂防会館では目立ちすぎ!そんな奴一人もいない所なのだから。

 広い部屋に入るとドアがいくつもあって、どこが入口か出口か壁なのか??不思議な部屋。襲われることを想定しているらしい。ストロボを4セット。通常の撮影では大袈裟すぎるライティングを組んだ。暫くすると、どこからか中曽根氏が現れた。早速撮影が始まる。ファインダーを覗く。眼光が鋭い。ド迫力!思っていた以上に強烈な人物。その人物に「あ〜して、こ〜してください」なんてカメラマンは平気で注文を出す。歴史的総理大臣に指示を与え、ゆ〜こと聞いて貰えるなんて、幸せ者だね〜と幸福感してる間に撮影終了。部屋中に散らばったストロボ撤収作業が始まる。汗だくになって片付ける僕らを中曽根氏は興味深げに見ている。終わったらいなくなると思っていたのに。じ〜っと見てる〜!撮影よりも緊張するじゃないか!見るのはヤメテチョ〜ダイ!…でも僕とアシスタントは代官山スタジオのスタジオマンだった頃、スピードはピカイチだったもんね〜!鍛え抜かれているから片付けなんて猛烈に速いのだ!驚くべき速さで終わらせると中曽根氏が優しい笑顔で話しかけてきた。
「あれだけのものを一瞬でセットし、一瞬で片付けるんだね」
「ハハハ…君は連合艦隊みたいだ」
どうやらセットする時もどこかで見ていたらしい。
やるね、中曽根さん。オチャメだね。感動しました。僕らのようなチンピラみたいな奴にも忙しい中、興味を持って観察するなんて。感服いたしました。