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 バンドブーム全盛期。当時、熱い奴らの中でも飛び抜けて心の熱い男がいた。『松本秀人』=hide
Xジャパンの写真集を出版するが、まるごと一冊、撮影を担当してくれないか。他のカメラマンだと相手が相手なだけにちょっと…と出版社から依頼があった。
打ち合わせ、撮影中ヒデは真面目。飯の注文になったら途端にうるさい。ワガママ。他のメンバーは弁当屋に出前頼もうって事になったが、ヒデは味噌ラーメン!…あのね、1箇所で頼むから。そこはラーメン無いから…そー言ってもダメ。味噌ラーメンしか絶対に食わない!とか言っている。とにかく撮影は無事終了したが、3度の飯のたびに活躍するヒデであった。

 その撮影からヒデと知り合い、度々指名で撮影依頼があった。出版社に指名理由を聞くと、「北原さんはやたら撮影が早いから好き。」だそうで、喜んでいいのか悪いのか…。

 雑誌表紙のヒデ単体撮影打ち合わせで、アンドロイド風に撮ろうって事になった。顔の半分は機械をはめ込んじゃう!さらに当時は珍しかった金のコンタクトレンズしてもらおう!話はどんどんエスカレートしていった。撮影当日、スタジオに来たヒデは少し疲れた様子。徹夜だったらしい。撮影は順調に進み、最後に金のコンタクトをはめてもらった。やっとの事で入り、撮影は始まった。ファインダーをのぞくと大粒の涙が出ている。どうした!?目が乾いていてコンタクトが馴染まず痛い。大事な人の目を傷つける訳にいかない。30秒で終わらせた。
「北原さん、まだでしょ。大丈夫だから納得するまで撮影してくださいよ。」こっちも辛かった。でもその言葉に甘え、コンテ通りの撮影を最後までさせてもらった。
ものを創り出すクリエイターの仲間だと認められた瞬間だった。ものを創ること。納得するまで思い通りに創りこみたい。絶対に手は抜きたくない気持ち。情熱が伝わり、人の気持ちが解る、素直で純粋な素晴らしき男。優しい男だった。ヒデの存在は、いつだってだらしなく根性無しの僕を未だに動かし続けている。
俺は今、ロックじゃなく赤ちゃん撮ってんだよ。ヒデだったらきっと微笑んでくれる。酒、呑んでいるか。また一緒に呑もう!